喜多日菜子のメモリアルコミュを振り返る

この記事は 喜多日菜子 Advent Calendar 2019 の 14 日目だ。内容は予告から変更した。

adventar.org

まえがき

この記事では、これまでに描かれてきた喜多日菜子というアイドルを、デレステのメモリアルコミュを通して振り返る。

喜多日菜子というアイドルについて、モバマスデレステでの解離が大きいという声があるが、それはある種仕方のないことだと言える。デレステでの各アイドルは、様々に散らされた特徴やエピソードをあつめ、そのアイドルを再構成するような試みが行われており、その最たるところがメモリアルコミュにある。

メモリアルコミュなしにデレステにおけるそのアイドルを十全に受け取ることは難しい。実際にここで確認するのは、喜多日菜子というアイドルがメモリアルコミュのなかでどのように整理されたかだ。

この記事を通して、これまでに触れてきた喜多日菜子の各カードのコミュや、イベント内での活躍に、あなたの関心が繋がることを祈っている。

メモリアルコミュでの描かれ方

デレステのメモリアルコミュは、シンデレラガールズというタイトルにおいて、一番簡単にそのアイドルのことをまとまった形で知れるコミュだ*1。メモリアルコミュの各話で語られる内容は、大枠として次のようにまとめられる:

  1. プロデューサーとアイドルの出会い
  2. 初めてのレッスン
  3. 宣材写真撮影
  4. お仕事の一幕
  5. プロデューサーとアイドルのこれから

プロデューサーとアイドルという関係になってからの軌跡をたどりながら、そのアイドルの性質・変化を一続きに描く、重要な資料だ。

2019 年末現在、喜多日菜子にはメモリアルコミュ 4 までが公開されている。

メモリアルコミュ 1

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きっとあれは運命だった、といつかあなたも思い返す

喜多日菜子は街中でスカウトされてアイドルの道を踏み出すことを決めた。コミュの中でほぼプロデューサーは押し負けている。日菜子の話ぶりは、まだ妄想が暴走気味で正確な読み取りが難しいが、この内容をよく補完しているRの特訓エピソードと合わせて次のように流れをまとめる。

  • 日菜子は王子様に迎えにきてもらいたいと思ってきた
  • 王子様が迎えにきてくれるのはお姫様だから、お姫様になりたいと思ってきた
  • アイドルとして有名になれば、王子様にも見つけてもらえるはず
  • アイドルは本物のお姫様ではないけど、お姫様みたいなアイドルにはなれるはず

日菜子がスカウトに即答できたのは、自分の夢と向き合い続けてきたからだ。王子様に迎えにきてもらいたい、王子様が迎えにきてくれるようなお姫様になりたいと願ってきた。でも本物のお姫様にはなれないとわかっていた。ではお姫様みたいになるにはどうなったらいいだろう、と考えてきたのかもしれない。

何にせよあなたにスカウトされて、アイドルになりませんかと言われたときに、これがお姫様に近づく方法なのだと気づけた。だから、日菜子は夢のために最初の一歩を踏み出すことができたのだ。

メモリアルコミュ 2

日菜子の初めてのレッスンはヴィジュアルレッスン、つまりお芝居だ。「どんな役だって演じられないといけない」という日菜子に出されたお題は「イジワルなお姉さん」や「王子様」だった。

喜多日菜子はふたたび試される。自分の夢のために、自分のイメージに合わない、自分がやるべきでないと感じる役でも演じられるか。日菜子はただのYESにとどまらず、一歩踏み込んでこの試しに応えた。こうした役を受け入れるだけでなく、自分のものにしていく姿勢を示した。

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夢見る「だけ」の妄想少女ではいられないと、日菜子は示してみせた

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この後に選択肢は出ないが、あなたならどう声をかけるだろう?

メモリアルコミュ 3

宣材写真の撮影をする回。前回からの流れもあってか、日菜子のやる気はさらに高まっている。キメ顔の練習をしてきて、イメージトレーニングもバッチリだ。

しかし撮影冒頭から妄想に耽ってしまい、せっかく練習してきたキメ顔は出番がないまま終わる。プロデューサーが日菜子に差し出した写真は「むふふ顔」だったのだろう。日菜子は、せっかく準備してきたことが発揮できなかったこと、もし素敵な現実が目の前にあっても見逃してしまうかもしれないことを危惧して、「妄想こんとろーる」を課題だと認識する。

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日菜子にとっての妄想は、素敵で楽しいから夢中になるもので、逃げ場ではない。

日菜子がなぜプロデューサーを妄想の相手にするかも、このコミュの中に語られている。プロデューサーの「これ(むふふ顔)も可愛いよ」「もっといろんな顔も見たい」という言葉に特異な反応を示した部分がそれだ。メモリアルコミュでの日菜子はここまで明示的にはプロデューサーを妄想のネタにしてこなかったが、妄想中でもプロデューサーの声は聞こえることに気づいた日菜子は、仕事中にはプロデューサーのことを考えるようになる。

ここから妄想の中での王子様役になっていく様子は、レアや妄想お姫様のテキストに見ることができる。

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デレステにおける「日菜子わーるど*2」の起こりはここにあるかもしれない

メモリアルコミュ 4

子供相手の朗読会のお仕事の一幕。朗読するのは『シンデレラ』だ*3

午前の部は滑り出しはよかったが、うっかり妄想があふれだしてしまい失敗。妄想こんとろーるはもとより、子供達にも申し訳ないと、午後の部に意気込む日菜子。

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失敗の様子。この後どうやってまとめたんだ……?

午後の部の日菜子は妄想こんとろーるもばっちり、子供達の疑問にも当意即妙に答え、日菜子と子供達共々、楽しい時間を過ごせたようだ。

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妄想の成果が出る即答。夢みるプリンセスの衣装はこの表現に近いかもしれない

イベント終わりの日菜子は、これまで自分が物語に夢中になれていたのは、夢中にさせてくれる人がいたからだった、という気づきを語る。午後の部では子供達を楽しませようと夢中になった結果、子供達も楽しんでくれたこと、自分も楽しめたことを挙げて、現実の素敵なことを見逃さずにいられたことを喜ぶ。

アイドルとしてプロローグの終わりにふさわしいコミュといえる。

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このコミュで語られたのは、モバマスでもデレステの各SSRでも語られてきている、ファンをはじめとするみんなに楽しんでもらいたい、夢中になってもらいたいという思いの原体験だ。

おわりに

デレステの喜多日菜子のメモリアルコミュでは、これまでモバマス時代から通してばらばらと語られてきた要素やその原点を整理し、どのようにして喜多日菜子がアイドルとしてのスタートを切ったかがまとめられていた。

各カードのコミュやイベントコミュにおける日菜子の行動や成長は、この内容を知っておくことでより鮮やかに輝いて見える。この記事の内容をうけて、あるいはご自身でメモリアルコミュを見返したのちに、各カードのコミュやイベントコミュを見返すと、新たな発見があるかもしれない。

先日このアドベントカレンダー内でトゥルー・ドリームについてもまとめた。プロローグを終え、その後に日菜子が歩んだ道のひとつの大きなチェックポイントだ。 berlysia.hatenablog.com

あなたの中の喜多日菜子像が、少しでもはっきりすることに繋がることがあれば、私は嬉しい。

*1:メモリアルコミュ以前で近いレベルの情報を得るには、どのアイドルでも見られる前提をおくとモバゲー版のぷちコミュを見る必要があった。

*2:モバマスでは「日菜子ワールド」、デレステでは「日菜子わーるど」表記で統一されている

*3:モバマスの無印Rでは、アイドルから連想するのはシンデレラだった。デレステではドレスを経由してお姫様に連想するよう変更されている

[トゥルー・ドリーム]喜多日菜子を振り返る

この記事は 喜多日菜子 Advent Calendar 2019 の5日目の記事である。

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まえがき

この記事では、いわゆるフェス限SSRの[トゥルー・ドリーム]喜多日菜子について、筆者の妄想力と若干の与太を込めて振り返る。平たくいうとこれは怪文書だ。

日菜子P諸兄においては、ご自身の妄想や解釈と通じるところ、こんな読み方もできるという話題があれば、ぜひ世に放ってほしい。ほかでもないあなたが発信することが、日菜子の実在性を高めることに繋がるからだ。

まだ日菜子をよく知らないという方においては、この記事がわずかにでも、あなたの中の喜多日菜子像を大きくすることに繋がることを祈っている。いずれかの一節でもあなたの心に留まれば幸いだ。

喜多日菜子とは

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メモリアルコミュ1、スカウト時の一幕。
アイドル→ドレス→お姫様の流れるような連想。

喜多日菜子は妄想が趣味のアイドルだ。童話をはじめとする多様な物語に触れて育ち、たくさんの人に愛され、素敵な王子様が迎えにきてくれるようなお姫様になりたいと願って、日々努力を重ねている。

[トゥルー・ドリーム]喜多日菜子とは

ゲーム外の視点

アイドルマスターシンデレラガールズ スターライトステージ(通称デレステ)内に登場する、最高レアリティSSRのカードのひとつ。そのSSRのなかでも一際入手機会が限られ、ゲーム的に強力な性能を与えられる傾向のある、シンデレラフェス限定……いわゆる『フェス限』にあたる。

喜多日菜子がフェス限SSRとして登場したことは様々な驚きと、様々な期待を呼び起こした。この記事では本筋でないので省略するが、喜多日菜子というアイドルは、大きな変化を伴って登場することがしばしばある。*1

登場時の公式アカウントからのツイート。
MVのスクショは「イリュージョニスタ!」の右から2番目配置、
撮影ポイントは『泡沫の煌き』が近いか。

コミュ・セリフでの描かれ方

特訓前ではベルギーの街を歩き、特訓後ではデンマークにある噴水広場で撮影する様子が描かれている。この噴水はチボリ公園にあるものと非常によく似ており、モデルになっているという見方が強い。ベルギーの街並みの方は具体的な場所と照らし合わされてはいないが、ブルッヘがモデルではないかと言われている。

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[トゥルー・ドリーム]喜多日菜子のプロフィールセリフ。
楽しそうな日菜子も可愛いよ。

喜多日菜子の表現としては初めて、特訓前後でどちらも困り眉になっていない。コミュ・セリフの内容としても、事務所に帰ってきた後のシチュエーションとみられるルームセリフ以外では、妄想すること自体に言及する場合を除いて一切「むふふ」と発しない。つまり、[トゥルー・ドリーム]における喜多日菜子は、妄想をしないのだ。

困り眉で描かれず、妄想にふける様子もないとはいえ、喜多日菜子が妄想と切り離されたわけではない。特訓前に描かれるのは妄想にまつわるたしかな日菜子の成長だ。特訓後に描かれるのは、妄想のプロとしての在り様の一側面だ。

特訓前:現実を見逃さない日菜子の成長

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[トゥルー・ドリーム]喜多日菜子
とっておきのときに被ろうと思って買った帽子には、青いバラがあしらわれている。花言葉は「夢かなう」

夢にまで見た憧れの風景

はい?ええ、今は妄想しませんよ~。ここを楽しまなきゃ損ですから~

デレステでの日菜子は、妄想コントロールの習得を一つの課題としてきている。かつて妄想のしすぎで失敗し、「現実の楽しいことを見逃しちゃったらもったいない」と反省していた日菜子。そんな日菜子が妄想より素敵で可愛く思える街並みを満喫する様子は、決定的な成長と言える。

童話の世界に入り込んだような、全てが可愛い尽くしの本物の街並みの体験は、これからの日菜子の妄想にもフィードバックされ、さらに妄想力に磨きをかけることになるだろう。

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メモリアルコミュ3、宣材写真撮影の一幕
まだ妄想をコントロールできず、現実を見逃すことがあった頃

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[トゥルー・ドリーム]喜多日菜子のホーム画面セリフ
妄想より素敵な風景にはしゃぐ日菜子。妄想はしなくても押しは強い。

ハートの色はオレンジ

日菜子にとっての妄想は、夢中になれて、幸せな気持ちになれるもの。まさに夢見心地でいられるものだ。現実の素敵な景色に囲まれて、プロデューサーに優しく見守られていることを含めて、それが日菜子は夢見心地で幸せだというのだ。

プロデューサーに対してはこれまで、厚い信頼と親愛を寄せていること、優しく見守ってくれて、愛情を注いでくれる人だとも語られてきている。その上で、これまでに描かれた心情の中では、最も強い親愛の表現と言って良いだろう。

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[トゥルー・ドリーム]喜多日菜子、特訓前の親愛度演出
どんなに振り切れていても、ハートの色は赤ではなくオレンジなのだ。今はまだ。

特訓エピソード:「喜多日菜子とプロデューサー」の再定義

仔細は省くが、このコミュは絶妙だ。是非自分の目で見てもらいたい。

背景にはTrust meのイベコミュが通じている。Trust meでは日菜子と王子様の関係が語り直された。王子様とアイドルのどちらを優先するかという問いに対して、たとえ王子様が現れても、アイドルを続けたいという答えがそれだ。

同じように、[トゥルー・ドリーム]の特訓エピソードでは、日菜子とプロデューサーの関係が語り直された。誘い受けな態度ではなくストレートに、純粋な疑問にはじまる。何かの予感が背中を押して、その通りだったら素敵だなあという思いが最後の一歩をまさに踏ませようとした瞬間を、「アイドルであること」に阻まれるという演出でだ。

この構造は日菜子の妄想によく出てくる展開と似ていることに、最近まで気づかなかった。

特訓後:妄想が現実になる日菜子の世界

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[トゥルー・ドリーム]喜多日菜子+
カメラの向こうの王子様も、日菜子に夢中に違いない。

日菜子わーるど、その根源

お待ちしていました、王子様…。予習は完璧…あとは、本番を待つだけ

日菜子はいつかお姫様になるためにとたくさんの努力をしてきた。幼い頃から童話に触れて育ち、ワンピースでカーテシーの練習をしてきた。ドレスを着たときの振る舞いはどうあるべきかは、よく知っている。「王子様を迎えるお姫様」というシチュエーションは日菜子にとって、「予習は完璧」「あとは本番を待つだけ」の、最初から持っていた夢トゥルー・ドリームだ。

プロデューサーが用意した、妄想通りの絶好のロケーションのなか、長年の研鑽とイメージトレーニングの成果があらわれる。ずっとそうすることを夢見てきた妄想少女はいま、王子様を迎える本物のお姫様となる。

日菜子だからかかった魔法

日菜子を本物のお姫様にする「この瞬間にかけられた魔法」を、日菜子はプロデューサーがかけたものだと思っている*2。しかし、どんなに妄想通りの素敵なロケーションも、日菜子のためのドレスでさえ、日菜子をお姫様に仕立てあげることしかできない。では日菜子を本物のお姫様とするためにここまでに欠けていて、あの場所にあったものは何か。

それは喜多日菜子自身だ。なりたいと願ってきたお姫様像、そんなお姫様はどうあるべきかを常々妄想し、その日を夢見て備えてきた、喜多日菜子という女の子がそこにいたことだ。日菜子自身が磨き上げ積み重ねてきた妄想と、アイドルになるより前から続けてきた日々のレッスン、ここに通底する日菜子自身の一途な夢トゥルー・ドリームこそが、この瞬間にかけるべき魔法を完成させる。

日菜子とプロデューサーの舞踏会

王子様のいない撮影が終わり、アイドルの時間も終わっていく。魔法が静かに解けていこうとする頃、プロデューサーが日菜子を迎えに現れる。魔法の残滓が日菜子をまだお姫様にとどめているうち、日菜子が求めたのは、プロデューサーとのささやかな舞踏会だ。*3

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[トゥルー・ドリーム]喜多日菜子、特訓後の親愛度演出。
魔法は解けてしまっても、この瞬間は確かにある。

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[トゥルー・ドリーム]特訓後のプロフィールテキスト
あとは王子様が来てくれるだけのところに、プロデューサーが現れた。
どう解釈するも自由だろうが、今はただこの事実だけで十分だろう

おわりに

[トゥルー・ドリーム]に描かれた喜多日菜子の姿は、そのひたむきさと、叶えたい夢に向かって正しい努力をしてきたことが身を結んでいる様子だった。アイドルとしても人間としても前に進んでいるからこそ、日菜子がアイドルになる以前からなりたいと夢見てきたお姫様像、「王子様が迎えにきてくれるお姫様」もやらせてもらえるようになった。

日菜子とプロデューサーの関係は、明確な親愛と信頼を確認した上で、今はまだその先を見るべき時ではない、の留保がついた。なぜなら、喜多日菜子はアイドルだからだ。王子様が現れてもアイドルを続けたいと思っているように。プロデューサーが最終的に日菜子の何であろうとも、今の日菜子はアイドルで、そして変わらずお姫様になりたいのだ。

[トゥルー・ドリーム]では、喜多日菜子がこの先に進むために必要な、確かな前進が描かれたのだと信じる。

これからの喜多日菜子の話をしよう。

関連リンク

*1:喜多日菜子とは (キタヒナコとは) [単語記事] - ニコニコ大百科

*2:[トゥルー・ドリーム]のルームセリフ「〇〇さん、次はどんな魔法をかけてくれるんですか?」に由来する。そのほか、日菜子はプロデューサーのことを魔法使いとも表現することがある。

*3:日菜子Pというのは、自己認識が王子様だったり魔法使いだったり騎士だったり馬だったりする、とても多様性のある括りだ。そんな日菜子を愛する者たちに対して、舞踏会の終わり際、王子様でもお姫様でもないふたりが、密かに二人だけの時間を過ごす……という展開をお出ししてくることは、絶妙なバランス感覚と言わずにいられない。

ICPC2015 国内予選 参加記

後輩であるS氏(B4),I氏(B2)と共に,チームhinakochanとして参加しました.8問中最初の3問を解いて,競技終了時に73位でした.

ICPCとは大学対抗のチーム制プログラミングコンテストです.くわしくはこちら


とにかく3問を早く解き,その上で4問目を掴みたいという心持ちでした.チームの中で一番競プロのコードを書き慣れている私がさっさとABを解き,その間に後輩たちに先の問題を見てもらうというフォーメーションでした.

リハーサル時にプリンタに嫌われたりと様々な問題に直面しましたが,なんとか本番までに解消して,競技中は不便なく進めることができました.

  • とけた
    • A
      • 差の数列の部分を取って与えられた範囲の最大値を出す
    • B
      • 始点を[0, N)範囲で動かして貪欲に文字数57577を満たせるように取れた位置を出力
    • C
  • とけてない
    • D
      • 1000円出して500円が無条件で手に入るやつとそうでないやつに分類して云々と後輩たちが議論していた
      • そんなにめんどくさいならDPでできるんだろうなと思いつつ手が出なかった
    • E
      • 後輩から無言でスッと差し出された
      • 強連結成分分解っぽいと思ったが見えなかった
    • F
      • 後輩から差し出されなかったシリーズその1
      • ただの最小全域木では済まないとわかっただけ
      • 終了後にマトロイドというものを初めて知ることになる
    • G
      • 後輩から差し出されなかったシリーズその2
      • 幾何であることを確認して山にスッと戻した
    • H
      • I氏から簡単ですと言われたが本当かよと思いながら読んだら確かにそんな気はした
      • 1Mx1Mの空間はさすがに座標圧縮しないとまずい,各階層はDijkstraでいけるか,時間が足りないなこれ

CはS氏が擬似コードを書いてくれたのでほとんど実装するだけでしたが,その実装の中でそこそこ詰まってしまい,かなりの時間を使ってしまいました.

私がCをバグらせている間,S氏の顔色がみるみる悪くなっていくのを見て私も胃に穴が空きそうでした.正解を確認した瞬間は競技中で一番熱かった.

さて3問解いたというところで順位を見ると,70位,これではとてもだめ,あと1問.

D問題に殴られて死んだという感覚でいますし,チームメンバーもおそらくそうでしょう.無限に時間が消えていきました.一応全ての問題に目を通したのですが,名前だけ知っていて実装したことがない手法が必要になるなど,行けそうだという気持ちになれる問題が他になかったのです.競技プログラミングで書いてきたコード量の少なさは,我々全員が共通するマイナス要素でした.練習不足というほかにありません.


こうして非早生まれのM1であるberlysiaの最初で最後のICPCは終わりました.

チームメンバーであるS氏とI氏にはとても感謝しています.昨年度の頭,学部時代に所属していたサークルのプログラミング班が休眠していたのを換骨奪胎して,データ構造やアルゴリズムを学ぶ集団を興しました.彼らは最初からずっと付いてきてくれているなかのふたりです.

昨年度の活動を見ていて,ICPCに出場できるのは何代か後になるだろう,そこまでこの集団が続けばだが,私も出たかったが仕方ないな,などと思っていました.ですが年齢制限等の条件を知って,ラストチャンスなら出ないともったいないと,彼らは私に出場を勧めてくれたのです.メンバーがいないなら名前と競技中の身柄を貸す,とも.

OB/OGの会のwikiTwitterではメンバー募集を出していましたが,もうあの時には,私はこの後輩たちと出ようと心に決めていました.chokudai氏をはじめ拡散のご協力をいただき本当にありがとうございました.結局手が挙がることはありませんでしたが,誰かが出てきたらどうするつもりだったんでしょうね.


中高生のころに全力で読み飛ばしてしまった青春の一ページを,いまやっとめくったような心地でした.サークルの各位,特にS氏とI氏,本当にありがとう.エントリーすることを決めてからの1ヶ月強,あるいはサークルを興した日から今日まで,本当に幸せな日々だったと思います.

最後に,コーチを勤めていただいたM先生,監督を引き受けていただいたS先生,快くご協力いただきありがとうございました.

模擬国内予選 2015 参加記

チーム hinakochan でした。B2の後輩(以下i)とふたりで。

開始15分前

b「どうやら間に合ったようだな」

開始直前

b「OSまだ入ってない」

開始直後

b「ところでs氏は来るのかな」(こなかった

b「プリンタ見えないんだけど」
b「研究室で刷ってくる」

b「ドライバ入ってなかった……」
b「研究室のマイマシンで刷るか」

b「刷った」
i「Aとりあえずもらいます」
b「じゃあCもらうね」

25分

i「いけそうです」
b「がんばれー」(まだC書いてる

38分

i「できました」
b「(提出方法を説明する)」

A AC

ib「やったぜ」

i「Bいきます」

90分

i「解法できましたがここどうしたらいいかわかんないっす」
b「んじゃ書くわ」(Cをそっと置いて
i「先眺めときます」

95分

b「やばいばぐった」

100分

b「いきますよー」

B AC

b「Cに戻ります」

120分

b「Cきっついわ」
i「Eわりと簡単っぽいけど15!でつらそうです」
b「実装できるならいいんだが」
i「つらい」
b「そうだな」

i「Fこれ(BNF)わからないんですが」
b「あーうん難しく考えなくていいと思うが」

130分

i「Dこんな感じでいけそうです」
b「じゃあ書くわCつらいし」

150分

b「Dのこれだめじゃん?」
i「まじすか」
b「まあ書いてみるか、C書ける気しないし」

170分

b「Dだめだろこれ」
i「まじすか」
b「だめっすね」

そのまま終了

環境整備とかもそうだけど、STLの使い方索引を引く方法持っとかないとアレがないで死にそう。

まだC通せてない……

Macbook Pro (mid 2012) のHDDを交換しようとして大失敗した話

HDDがどうのこうのと言っていますが、原因はHDDの接続に使っていたフラットケーブルの破損でした。(2015-05-21)

概要はタイトルの通りである。

得られた教訓

  • 相性保証は確認済みでない限りちゃんとつけよう

事の顛末

突然起動しなくなるMBP

普段から2日に1回はフリーズするような子だったので、その日もいつもどおりにフリーズに対処すべく電源を落とした結果がこれである。

機嫌がいいときもある

翌日は起動できたのだが、しばらく放置していたらエラーで再起動していて、そのまま上記の状態に戻ってしまった。 かと思えばまた起動できてふつうに使えたりと、いやーな状態であった。

困ったときのGenius Bar

こういうときは速やかにGenius Barに持ち込むのが上策である。行った結果、HDDのセクタ異常ということがはっきりした。

純正品に交換するのもバカらしい(ジーニアス談)ので自前で交換を行うことにする。

HDD購入

Tsukumoで安かったWD7500BPVXを購入した。容量は以前と同様、回転数も同じ。SATA3対応で高速化は見込めるかな程度に思っていた。

ここで一切の保証をつけなかったことが最大の失敗であった。

換装

T6のトルクスドライバーは用意がなかったので借りた。特に困ることもなくサクッと交換。USBからOSXのインストールを試みるも、なぜか換装したはずのHDDが表示されない。ははっ、まさかね。

試行錯誤

USB経由で繋いでみる

普通に認識された。HDDに問題はないと判断。

直結してみる

やっぱりだめ。

セクタ異常になった元のHDDをUSBで繋いでみる

当然のように認識できた。

元のHDDをMBPに戻してみる

起動はできなかったけどDisk Utilityからは確認できた。

まさかOS入ってないから見えないとかないよね

そんなことはなかった。USB経由でインストールは無事に完了できたが、MBPに入れるとやっぱり見えない。


これもう相性問題だと思うしかないよなあ。とはいってももうお金ないんですよね……安物買いの何とやらではないけど失敗した感。バックアップも万全なはずなので、安い授業料で済んだとは思いたいが。

あとこの換装あたりの作業中にiPhone落として画面の割れが進行しました。

SRM 627 Div2 oo- unrated -> 1176

するめ。初参加。challangeとかのことは一応知ってる状態。

英語の問題をどれだけ早く読み解けるかという壁が立ちはだかった。読めても今のところは1000点はだめだっただろうな。

250 ManySquares

概要

いろんな長さのまっすぐな棒がある。組み合わせて作れる正方形の最大数。ただし1辺を構成するのに1本しか使えない。

入力

  • 棒の長さの列sticks
    • 列の長さは1..50
    • 棒の長さは1..1000

出力

  • 作れる正方形の数(非負整数)

解法

結局同じ長さの棒4本に対して正方形1つになるので、端から集計していって、4本毎に個数に1足す。

class ManySquares {
  public:
  int howManySquares(vector <int> sticks) {
    map<int,int> hash;
    int ans = 0;

    rep(i,sticks.size()){
      hash[sticks[i]]++;
      if(4 == hash[sticks[i]]){
        hash[sticks[i]] = 0;
        ans++;
      }
    }

    return ans;
  }
};

500 HappyLetterDiv2

何かのゲーム。最初にフィールド内に何人かプレイヤーがいて、各プレイヤーが英小文字をひとつずつ持っている。各ターンに異なる文字を持つプレイヤーが2名選ばれてフィールドから除外する操作を、選べなくなるまで繰り返す。残ったプレイヤーがいるなら、プレイヤーの持っている文字は全て同じになるので、その文字が勝利文字。いなければ、勝利文字はない。

最初の段階でゲームがどのように進行しても必ず勝利文字になる文字が特定できるらしい。できるならその文字を、できなければピリオドを返せ。

入力

  • 最初にフィールド内にいるプレイヤーの文字を結合した文字列letters。
    • 文字列長は1..50
    • 各文字は'a'..'z'

出力

  • 必ず勝利文字になるような文字が存在するなら、その文字。しなければ、ピリオド。

解法

過半数を占める文字があればそれが勝利文字、なければ選び方によって変動するのでピリオド。半分丁度ではプレイヤーが残らないので勝利文字にならない。

class HappyLetterDiv2 {
  public:
  char getHappyLetter(string letters) {
    map<char,int> hash;
    int maxCount = 0;
    char mostPopular = '.';

    rep(i,letters.size()){
      hash[letters[i]]++;
      if(maxCount<hash[letters[i]]){
        maxCount = hash[letters[i]];
        mostPopular = letters[i];
      }
    }

    if(maxCount <= letters.size()/2){
      return '.';
    }else{
      return mostPopular;
    }
  }
};

1000 BubbleSortWithReversals

概要

  • 非負整数列Aをバブルソートするときに、swapする動作の回数を最小にしたい。
  • ソートする前に次の操作をK回まで行ってよい。
    • Aの部分列の順序を反転する。ただし、各回で選ぶ部分列は独立であること。

入力

  • 非負整数列A
    • 長さは2..50
    • 各値は2..50
  • 自然数K

出力

  • swap操作の最小回数(非負整数)

解けてないので解けたら更新。

LTP08の話をすると見せかけた桃子の話

先日、LTPの個人曲について喋るニコ生をした。その時に私がした話をベースに書く。

ここに何が書いてあるか

LTP08のメンバーは充実した現実世界の生活をおくってきたけど、桃子は現実世界では友達もいなくて孤独に生きてきたから、LTP08のメンバーにならなかったのは残念ながら当然。これからがんばろう。

曲目の確認

LTP08にて何が描かれたか

LTP08のメンバーは、最年少の中谷育(10)、下から3番目の大神環(12)、矢吹可奈(14)、高槻やよい(14)の4名からなる。メンバー発表当時よりロリ組と話題になっていたのが、もう大分前のことに思える。

「ホップ♪ステップ♪レインボウ♪」が描くのは友達関係に関することだ。ひとりよりふたり、ふたりよりたくさんの精神で、友達を最大の宝としている。Bメロの歌詞は1番と2番で対応しており、友達関係につきものである喧嘩と和解を歌っている。何よりみんなで遊ぶことが楽しい、みんな一緒に外に飛び出そう、という歌。

「グッデイ・サンシャイン!」は中谷育の性質をよく表している。この年齢にしては増せている方で、子供扱いすることを嫌がり、何か任せられることに大人っぽさを感じてウキウキする一方、その内情は年相応の女の子である。こちらは、みんなと過ごすいつもの時間を踏まえた上で、ひとりで何かをする、みんなとは違うことをすることに、まわりのみんなに対する優越感を感じている。

「オリジナル声になって」は自分自身と向き合う。矢吹可奈の明るく前向きで努力家な一面をおさえながら、自身は何であるのか、何が自分自身であるのかを探し求める、青年期の課題に頭から突っ込んでいく歌になっている。*1

「ハートウォーミング」は家族の中の自分の存在を描く。高槻やよいの背景によく対応した歌詞になっているが、ここに歌われるのはまさしく、家族の中で母親にも似た頼られる位置にあって、その役目を全うする、年齢からは想像もつかないほどの強い母性の姿である。

「Good-Sleep, Baby」では、環の歌うすれ違いや可奈の歌う努力についてこれらを受容し、眠る間は大変なことは忘れて、ゆっくりおやすみなさい、とドラマパートでテーマになっていた「癒し」をイメージさせる。

現実世界の住人たち

4名とも、歌の内容は現実世界の人との関わりについて言及している。面々はみな現実世界に居場所を持ち、その中で生活を送ってきた。それぞれの曲に注目すれば、大事にしたいみんなという集団を認識し、その中でどう自分を認められたいか、そもそも自分とは何であるかを考え、自分が集団の中でどのような存在として振る舞うか、と段階を踏んで成長する子供の精神が浮かび上がってくる。

「Good-Sleep, Baby」は日中の現実世界での営みを踏まえた、夢の中での「癒し」を歌っており、あくまでメインステージは起きている間、現実の世界であることを印象づける。

やっと本題。

桃子はLTP08のメンバーにはなりえなかった

桃子がこのLTP08のメンバーと決定的に異なる点が、彼女は友人関係が壊滅的な状態にあり、更に両親との関係も良好とはいえない*2、というところである。LTP08の曲に見出した精神の発達を、桃子はどれもまともに経験できていないか、一般とはかけ離れた形で経験してしまっている。彼女には現実世界に居場所がなかったのだ。

桃子には、夢の中でまた会うような友達はいないのだ。現実にもいないのだから当たり前のことだ。だが彼女にとっても、夢の世界は強く意味のあるものである。

「デコレーション・ドリ〜ミンッ♪」に描かれる桃子の夢の世界

桃子は11歳、中谷育と大神環の間で、ミリオンスターズの中で2番目に若い。それでいてかつて人気子役であった経歴を持つ。アイドル以前から彼女は、演技の世界の人間であった。

夢の世界、つまり現実でない世界は、そもそもが桃子のメインステージなのだ。演技の世界ではどのような自分にもなることができる。それこそお姫さまだろうと構わない。おとぎ話でさえ叶えることができるのだ。実際は、それまでの現実の世界には「一緒に踊って」くれる人はいなかったのだが。

歌の中にも、夢の世界以外の話題は出てこない。仕事の場も遊びの場も夢の世界だった桃子は、現実世界に生きてきたLTP08のメンバーと一緒にはいられないのだ。

桃子を救済するLTP12、「ココロがかえる場所」

ではLTP12に入って桃子はどうなったのかというと、孤独だった桃子自身が既にかけがえのない現実の存在で、そのときがあったからこそ、踏み出した今を強く歩けるんだよ! と過去の自分に対する追認という形式で、問題をあるがままに自分に組み込んでしまう。今のアイドルとしての生活を現実世界における桃子自身の居場所とし、夢ではなく現実として、目の前のステージを楽しむことを欲するようになる。

これはある程度年齢を重ねた者からしか出てこない機転であって、LTP08にいるような子供たちからはなかなか得られないものだ。*3桃子自身、年齢にふさわしくない形で大人の世界に順応してしまっていて、桃子が何かしらの形で認めた大人の姿しか、彼女の心を打つことができなかったのだと思う。

LTP12のメンバーは何かしらの課題を乗り越えてきた、あるいは乗り越えようとする面々が並ぶ*4が、その人選は桃子の救済がひとつの大きな目的であったものと思う。

LTP12の話は、また改めてまとめる。

*1:曲としても夕暮れ時をイメージさせ、ノスタルジックな雰囲気を強く感じさせる。

*2:儚い夢の一滴 周防桃子』のカードテキストをはじめ、クリスマスのアイドルフィーチャリングのテキストなどより。

*3:ロコ(15)はこの意味で先んじている。可奈が悩みながらもずんずん進んでいくよりずっと早い速度で、こうありたいという自分像に向けて、考える前に手を動かしてさえいる。

*4:ロコだけは強烈にポジティブなモチベーションに思えるが、実際はどうなのか定かでない。