「王子様」も「お姫様」もない、2021年の喜多日菜子

はじめに

2021年の喜多日菜子の活躍は直近数年の中でもかなり特徴的で、「王子様」と「お姫様」への関心を抑えめにしたものでした。それでも喜多日菜子が成立するのはなぜなのかという疑問にいったんの答えを出し、今後の喜多日菜子の展開にひとつ予想を加えます。

この記事は喜多日菜子 Advent Calendar 2021の25日目、最終日の記事です。

adventar.org

「お姫様」「王子様」を控え目にした喜多日菜子を提示する1年

喜多日菜子の主要な活躍は、どちらも演技の場を中心として描かれました。

総じて「王子様に迎えに来てもらえる存在としてのお姫様」や「出会うべき運命の人としての王子様」という要素は控えめな、日菜子の個人の気質を反映した宛書になっていました。

『友星公演』

妄想を物語のカギに据えて個人の気質に注目した主人公としての役どころでした。我々の良く知る日菜子に近い人物としての宛書で、ちょっと夢みがちで心優しく正義感の強い普通の女の子としての活躍が描かれました。

『星環世界』

宇宙再進出の中心に立つ科学者という役どころで、他の人物のテキストが中心ながら、人物としても皆に慕われる人物を演じました。王子様やお姫様といった要素は設定上抑え目となりつつも、個人の気質を活かした前向きさと好奇心を備えた科学者としての活躍が語られました。 現実パートでは、乙女心をくすぐる存在として砂塚あきらに王子様の才能を見出し観察力をアピールするほか、VR技術に目を輝かせるような好奇心の強さが描かれました。

berlysia.hatenablog.com

去年末に妄想した日菜子の姿を評価する

2020年末には 今が知りどき! 今日から始める喜多日菜子2020 という記事を書き、記事中では2020年時点での喜多日菜子の特徴と、今後の活躍を妄想しました。

berlysia.hatenablog.com

この記事では次のような話題を扱いました:

  • 最近の喜多日菜子
    • アイドルとしての魅せ方を確立
    • 類い稀な妄想力から、見る者を引き込む多彩な世界観へ
    • 冒険に試練はつきもの、その先の宝物を目指す主人公性
  • これからの喜多日菜子を妄想する
    • みんなを夢中にさせる、妄想の世界へ
    • 王子様への想いから転じて、多彩な思慕・愛情表現の起点に
    • アイドルとして、憧れられる存在としての一面を確立へ
    • さらに広がる交友、新しい一面を互いに引き出しあう

1年経過してみて、何か見直しが必要だったりする部分があるでしょうか。

喜多日菜子の説明に「乙女心」という軸を足せそう

『星環世界』においては現実パートも含めて日菜子の「王子様」「お姫様」が抑えられていたのに、それでも日菜子が夢みがちなだけの前向きな子という印象にはならず、むしろ喜多日菜子の平常運転を感じさせられるのは、現実パート側にて日菜子の「乙女心」が描写されているからであると考えられます。

もともと日菜子が言う「王子様」には意味するところが複数あるという説明をしてきましたが、『星環世界』での喜多日菜子と砂塚あきらとのやり取りをうけ、[あなたに捧ぐ王子様]特訓前後での日菜子自身の振る舞いを再確認すると、(記事前半での記述と前後しますが、)運命の人としての王子様に対する異なる王子様の像として「乙女心をくすぐる存在としての王子様」という説明が与えられそうでした。

『ギュっとMilky Way』関連でも、ドリームアウェイの相方である佐久間まゆのセリフ中に「日菜子ちゃんの妄想は乙女心の暴走」という説明がありましたし、営業コミュやデレぽ等での交流が増えている小松伊吹とのやり取りをうけても、喜多日菜子の「乙女心」という関心事は直近とくに重要視されていそうでした。

この表現はもしかすると一般に言われる乙女心とは異なっているかもしれませんが、全く外してもいないだろうという仮定のもと、いったん日菜子を説明するうえでは「乙女心」が大事そうだという理解を得られました。

主人公性は大きく強調された

『友星公演』は名実ともに主人公役、『星環世界』でも地球側勢力の中心人物として状況を動かす役を任されました。作品中の劇における配役とはいえ個人の気質を反映した宛書であるとみえ、日菜子個人の説明としても一定の評価ができる範囲であろうと伺えます。

アイドル活動上での主人公性は『ギュっとMilky Way』でも描かれてきた部分ですから、今後も良い具合に活用されることを期待します。

交友関係はさらに広がっている

『友星公演』では神崎蘭子鷺沢文香といったこれまでの交友に加えて辻野あかりとも共演を通じた縁が描かれ、『星環世界』でも砂塚あきらとの縁を強く印象付けました。

デレぽでも前年までに描かれた交友や、そこを中心にしてのもう1ホップはもちろん、これまでなかった相手への投げかけも描写されました。文字上の軽いやり取りの向こう側にはきっと見えない無数の交流があるでしょうから、一見一方通行なものでも今後の動きを見守りたいところです。

今後の喜多日菜子を妄想する

2021年の喜多日菜子で控えめだった「王子様に迎えに来てもらえる存在としてのお姫様」と「出会うべき運命の人としての王子様」という要素は、モバマスデレステ通して喜多日菜子の根底に流れる主題のひとつですし、[トゥルー・ドリーム]周りのコミュに連なるものでもありました。 [トゥルー・ドリーム]や『世界滅亡 or KISS』の描写により、これらの主題には各観点で一定の区切りが与えられつつあり、日菜子の大事な原点の気持ちとして落ち着きつつあります。

今後の喜多日菜子がどのようになっていくのか、今回は昨年の話題にひとつだけ書き足したいと思います。

最初に提示された課題の明確な解決

喜多日菜子に最初に提示された課題は、「どんな役でも演じられるようになること」でした。この課題はメモリアルコミュ2で語られており、プロデューサー側が提示する役は「イジワルなお姉さん」か「王子様」の二択になっています。どちらを選んでもコミュ内の日菜子は拒絶しますが、立派なアイドルになるためにできるようになると決意表明しています。

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メモリアルコミュ2より。どんな役でもやるって言ったよね?

その後の喜多日菜子はといえば、ブランフェス限SSRの[トゥルー・ドリーム]において描かれたように、正統なお姫様役の出番を得られる、立派なアイドルになっていることが描かれています。

ハロウィン限定SSRの[あなたに捧ぐ王子様]では、冠する名の通りに王子様の役で登場し、自ら抱いてきた王子様への憧れの気持ちを発展させて、アイドルとしてみんなに差し向ける様子が描かれ、Twitterの反応では日菜子王子の夢女子になった方々も見受けられました。

「イジワルなお姉さん」に対応するものを物語上の障害になる人物ととらえたときに、『世界滅亡 or KISS』に登場する「悪い魔女」というのはここに該当させられそうです。

【魔女】のモチーフ

魔女が「イジワルなお姉さん」にあたるか、というと少々強引な部分がありそうですが、それならば「イジワルなお姉さん」を踏まえた上で魔女のモチーフをSSRでやっておくと、かなりおさまりが良いのではないでしょうか。

ノワールフェス限が少々ダークな方向を拾いがちだという点をうけて、喜多日菜子のノワールフェス限のテーマとしても、一部の日菜子Pの間で話題が上がりやすい部分です。

このように劇中劇での活躍の方面へも良い布石になりえて、喜多日菜子が最初に与えられた物語に一区切りを与えた上で、お芝居の方面にもこれまでにない要素を加えられます。魔女モチーフのSSRというのは、日菜子にとってかなり先の広がる選択肢であるように見えています*1

おわりに

2021年の喜多日菜子の活躍は、これまでの数年間と異なり、王子様への憧れも、王子様が迎えに来てくれるお姫様という要素もアピールが薄いもので、特徴的でした。その代わりに喜多日菜子個人が持っている気質の前向きさや好奇心の強さ、観察力の高さや乙女心など、多彩な魅力を押し出す1年となりました。

喜多日菜子に最初に与えられた主題は少しずつ役割を終え、いまの喜多日菜子を構成する大事な要素として残るようになりつつありそうです。王子様やお姫様といったキーワードは主題としては一度出番が落ち着いて、喜多日菜子という人物が持っている前進性や明るさ・優しさといった気質と、持ち前の想像力・妄想力に立ち返りながら、これまでに培ってきた交友関係やアイドルとして学んできたことを発展させていく動きになっていくのではないでしょうか。

*1:世界滅亡 or KISSでもやったしな、って思ってもらえそうだなという気もする