ある喜多日菜子Pが見た『世界滅亡 or KISS』ファーストインプレッション
まえがき
追記: Happy New Yell day1で初披露されました!!!!! 喜多日菜子役の深川芹亜さん、関わったすべての方々に最上級の感謝を!!!!!
この記事は喜多日菜子のソロ曲『世界滅亡 or KISS』に関する、ある日菜子Pの受け取りを記録したものです。あまりにも、あまりにも、喜多日菜子でした。
『世界滅亡 or KISS』を聞いて喜多日菜子が気になったあなたには、前提とする喜多日菜子の知識が伝わるように。すでに日菜子Pのあなたにも、どんな解釈を前提にしているかがわかるように、丁寧に書いたつもりです。
どうしても日菜子の核心に触れがちなので、様々なネタバレがあることをご勘弁ください。ということで、
⚠️この記事は、喜多日菜子のこれまでに公開されたコミュ全てのネタバレを含む可能性があります。⚠️
まだフルを聞いていない方は是非聞いてください。『世界滅亡 or KISS』が収録された『Sing the Prologue♪』は日本コロムビアから好評発売中です。
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事前知識
喜多日菜子とは
喜多日菜子は妄想が趣味の15歳です。童話をはじめとする多様な物語に触れて育ち、たくさんの人に愛され、素敵な王子様が迎えにきてくれるようなお姫様になりたいと願って、日々努力を重ねています。
日菜子と妄想
日菜子の妄想に関する話題は頻繁に取り上げられています。これまでの例示からいくらか特徴を挙げると、「急展開」「ピンチが訪れる」「王子様のような役どころの人物が登場する」あたりは定番のようです。
日菜子は夢の中でも普段から妄想をしていて、眠る前にひと妄想した上で、目覚めてからは夢を振り返ってその展開を吟味しています。
妄想は日菜子にとって重要な一要素ではありますが、妄想にのめり込むばかりでない点もまた、喜多日菜子を強く特徴づけています。地に足のついた夢想家という表現がふさわしいでしょう。
日菜子とアイドル活動
メモリアルコミュに描かれるように、日菜子は王子様に見つけてもらうことを夢みてアイドルになりました。ステージやテレビで活躍すれば、王子様はきっと日菜子を見つけてくれると考えたからです。
日菜子と『王子様』
喜多日菜子が『王子様』という言葉をつかうとき、大きくはふたつ、白馬の王子様に代表されるステレオタイプな王子様と、いつか自分が出会うべき運命の人としての王子様に意味が分かれます。後者を指して「白馬の王子様」という表現が使われることがありますが、形から入るのも立派な妄想のアプローチです。
『王子様』とアイドル活動
日菜子はあるときまで、王子様に見つけてもらうことをアイドルの目的とし続けていました。Trust meイベントコミュに描かれるように、現在ではアイドルとしての活動それ自体を楽しんでいるという自覚を持っていて、王子様もその姿をきっと求めてくれると信じています。
アイドルになりたい、が軸ではなく、
アイドルになって王子様に出会いたい
が先にあり、
アイドルとしてこんな姿を見せていきたい
を獲得して、
アイドルであり続けたい
に到達したのが、喜多日菜子なのです。
日菜子とプロデューサーの関係
これまで日菜子の妄想のなかに様々な役柄で登場してきたプロデューサーですが、定番の立ち位置は「王子様」と、次点が「魔法使い」です。
特異点[見果てぬ夢]
喜多日菜子のCV初披露となった[見果てぬ夢]の思い出エピソード後編では、「プロデューサーさんは、日菜子の運命の人(〜)王子様なんです」、との直截な表現が登場し、当時物議を醸しました。妄想子芝居の延長と読めなくもない点や、カードテキスト側での言及がない点、後の再登場時の展開を踏まえても、プロデューサーが運命の人としての王子様その人であるとは、依然として断定できない状況にある……とするのが穏当だとされています[要出典、独自研究]。
日菜子はプロデューサーをどう思っているのか
日菜子の側からの思わせぶりな表現は多いものの、プロデューサーさんが王子様ですという確定的な表現は上述の1例のみに留まっています。
近年の傾向としては、日菜子の妄想に頻繁に王子様役で登場する、王子様をイメージしていたらプロデューサーに到達してしまうなどの表現に落ち着いて、かっこいい、やさしい、頼りになる、愛情を感じる、日菜子の妄想についてこられる唯一の人、日菜子の王子様に限りなく近い人、などの表現が伴うようになっています。
ざっくりと、そんなプロデューサーのような人が(運命の人としての)王子様だったらいいな、くらいには思っていると言えましょう*1。
[トゥルー・ドリーム]に描かれるように、「プロデューサーは日菜子の何なのか」という問いの答えは、時が来るまで求めないことになっています。
詳細はぜひフェス限日菜子こと、[トゥルー・ドリーム]喜多日菜子の特訓エピソードをご覧ください。デレステ5周年が近いので、限定入りセレチケの候補にぜひどうぞ。もうすぐ実装から丸1年になります。
[トゥルー・ドリーム]については、思わせぶりな記事の用意があります(末尾の関連リンクからもご覧いただけます)。
『世界滅亡 or KISS』
考察に備えた認識の共有のために、この記事で前提とする『世界滅亡 or KISS』の章分けを確認していきます。
もちろん、ここで示す章分けは筆者の解釈のうち、この解説に都合のよい一パターンであることをご承知おきください*2。
プロローグ:この中に王子様はいませんか!?
冒頭から、「王子様探しの日々が始まったのです!!」まで。
強引な展開は妄想少女の特権です。悪い魔女にかけられた呪いで世界は滅亡する運命になりましたが、良い魔法使いさんの計らいによって、運命の王子様との愛のキスによって呪いを解くことを目指し始めます。
悪い魔女の呪いは一旦置くとして、魔法使いの魔法が呪いを弱めて能動的な王子様探しが始まる点は、日菜子がプロデューサーに路上でスカウトされたシーンを想起させられます。
ここで「私」と日菜子の間に共通するのは、王子様を自分で探しに行くことを誰かに示されたわけではなく、自分でその選択をしていること、当人はきっかけを与えられたに過ぎないということです。
第一章:私の王子様? なんて聞けない
「クラスメイトのあの子かもだけど」から「こうして私の旅は続いていく……!」まで。
どこにでもいる普通の女の子なので、王子様を手近なところから探し始めます。王子様はどこにいるかわかりませんからね。
とりあえず学校に行ったのでしょうか、クラスメイト、先輩、先生、まさか直接聞いていくわけにもいかず、全然手掛かりは得られません。普通の女の子であるところの当人は『渾身のキス待ち顔』で、王子様に見つけてもらうための準備だけは、ばっちりのつもりです。
『見つけて!/早く 私を/白馬の王子様/じゃなきゃ/世界が終わるの/恋する前に』とあるように、この「私」はどうやら、世界が終わるよりも王子様に出会えないことの方が問題のようです。
第二章:どこですか? 私の王子様!
「この広い空の下のどこですか?」から「ピンチ!」まで。
青い空に真っ白な雲のシーン。魔法使いさんの助言をうけて、どこにいるかわからない王子様を探しに、女の子は冒険の旅に出かけました。
運命の王子様を見つけ出すためなら「炎の山」も「氷の谷」も越えようという姿は、日菜子本人にも通じています。
第三章:全部叶えて王子様
「紅 染まる 夕暮れ」から「それでも走って、走って、走り続けた。」まで。
夕暮れのシーン。運命の王子様に対する「私」の要求がワガママでかわいいですね。
優しさだけでなく刺激やヤケドしちゃいそうな恋にも夢みるのは、直近の日菜子を思い返します。
第四章:助けてくれたのは王子様じゃなく
「けれど、煙の檻に囚われてしまった私の意識は」から「えへへ……♪」まで。
熱い古戦場跡から、月がきらめく夜のシーン。
いつもの日菜子の妄想なら助けてくれるのは王子様ですが、今回は魔法使いさんでした。
第五章:王子様を見つけることはできなかったのです
「そうこうしているうちに」から「私は、あることを決意した——」まで。
月の光も失われたシーン。長い旅路の果てに、運命の王子様はついに見つからないまま、運命の日が訪れます。
魔女の役さえ日菜子のセリフとして表現される点は、メモリアルコミュ2のやり取りを思い返します。
第六章:私が決めたんだからあなたこそ運命
「『運命の王子様』はどこにもいなかった。」から「私の王子様 魔法をかけて」まで。
私の王子様は魔法使いさんあなたですとまで言い切っておいて、「私の王子様/魔法をかけて」と最後の踏み込みを委ねているあたり、この子はやっぱり王子様を待っているのだと言えましょう。魔法って何なんでしょうね。*3
エピローグ:いつか未来に、王子様とのハッピーエンドを
「目を開けると、」から終わりまで。
いつもとかわらない朝のシーン。「見慣れた天井、大好きな色のカーテン。」というフレーズには、「私」の日常が幸せに満ちていることを察します。
夢だったのか現実だったのか曖昧な気持ちになるほど、「私」にとっても真に迫るものだったのでしょうか。日菜子の日常であれば、妄想の振り返りをするようなタイミングですね*4。
いつもと変わらない朝。けれど「私」の足取りは、きっといつもより軽いに違いありません。
考察、あるいは妄想を伴う解釈
「私」の夢
日菜子が運命の王子様に憧れている点は確認しましたが、「私」自身も運命の王子様に憧れている節は、第一章の恋する前に世界が終わってしまうくだりをはじめ、各章に散りばめられています。
「私」も日菜子と同様に、白馬に乗った王子様が迎えに来てくれること、運命の王子様と出会うことが憧れであったと言えましょう。*5
「悪い魔女」がもたらす終末
いつか白馬に乗った王子様が迎えに来てくれる、という甘い夢からは、本当に王子様が迎えに来ない限り、いつかは醒めることになります。端的に言えばその夢を手放さざるを得ない何かであったり、諦めてしまったり、可能性を託す未来がなくなるようなシチュエーションです。
「悪い魔女」がもたらす終末は、「私」にいずれ訪れるであろう、「運命の王子様がいつか見つけてくれる」という夢の世界の終わり、夢を見続けられなくなる瞬間を表しています。世界の滅亡というのは、可能性を託す未来がなくなることの最たるものと言えましょう*6。
日菜子にとってみても、プロデューサーと出会ってアイドルになり、備えて待つだけの妄想が、叶えられる・叶えたい夢に変わった今でもなお、そのタイムリミットは刻一刻と迫っています。
「良い魔法使い」が示した選択肢
プロローグで確認したように、理不尽にも告げられる夢の世界が終わる未来に対して、ドロンと登場した魔法使いが提示するのは、「運命の王子様と出会い、愛のキスをすること」。ここから「私」は「運命の王子様を探し出す、見つけてもらいに行く」ことを決意します。
「私」と「良い魔法使い」がたどりつく結末
白馬の王子様が迎えに来てくれるという夢が破綻する条件は、もうひとつあります。
それは、世界のどこにも王子様がいないと確認してしまうことです。
魔法使いさんの提示した選択肢と「私」の熱い想いによって、この世界は端から探しつくされてしまいました。王子様がどこにも待っていないことを、その身で証明してしまったのです。どうしましょう?
「私」の決意
第六章、タイムリミットが迫るなか、求め続けた運命の人はどこにもいませんでした。
でもここまでずっと一緒にいてくれて、見守ってくれて助けてくれて、長く一緒に歩んできてくれたひとが、ここにひとりいます。これまでに見てきた人たちは王子様ではなくて、世界の命運を握っているのは私と魔法使いさん、とうとう世界にふたりきり。
これは『究極の妄想』です。世界に私と魔法使いさんのふたりしかいないなら、王子様は魔法使いさんで、迷う余地はないのです。
『私が決めたんだから あなたこそ運命』
もしこれで本当は違っていたとしても、運命の王子様など本当にいなかったとしても。何も選ばなければ恋する前に世界は滅びます。
魔法使いさんを選んで仮に世界が滅んだとしても、一緒に歩んできたこの魔法使いさんとならそれでも構わないと、「私」には思えたのです。*7
「私」の運命、日菜子の運命
日菜子が辿り着くひとつの可能性
アイドルとして活躍することで王子様に見つけてもらうことを目指している日菜子ですが、そんな日菜子が全世界の人間に知られるような存在になったら、それでも王子様が見つからなかったら。「私」と「良い魔法使い」が辿り着いてしまった結果に、日菜子とプロデューサーも辿り着くことになります。
もしそんな未来が来て、ずっとプロデューサーが支えていてくれたなら、そのときは日菜子も、「私」と同じ選択をするかもしれません。『世界滅亡 or KISS』が提示する、ひとつの可能性と言えましょう。
見果てぬ日菜子の王子様
表現を変えて繰り返しますが、「私」が夢の中で魔法使いさんこそが私の王子様だと決めても、日菜子が王子様はプロデューサーだと決めたわけではありません。*8
そうだと日菜子が決めたとしても、プロデューサーがどのような態度を見せるかは、依然プロデューサー自身の手に委ねられています。
[トゥルー・ドリーム]の問いとプロデューサーの答えがあの鐘の音の向こうに封じられているように、日菜子の出す答えもまた、夢と妄想と未来の中に託されているのです。
あとがき
『世界滅亡 or KISS』は、喜多日菜子が辿り着きうるひとつの未来を描いた、ファンタジックプリンセスストーリーでした。
あなたは日菜子にどんな未来が訪れることを願いますか?
プロデューサーであるあなたと日菜子は、どんな関係でありたいですか?
曲自体や話の流れの都合で書かなかったこともありますが、長くなりすぎても大変ですし、これはあくまでファーストインプレッションということにして、今後の読み解きの発展に託します。もしかしたらまた、とんでもないことを日菜子が言い出すかもしれませんし。
日菜子がこれからも夢を見続けられますように。
そしていつか未来に、日菜子にハッピーエンドを。
日菜子の妄想に、日菜子が歩む物語に、終わりはありません。
関連リンク
- アイドルマスター|THE IDOLM@STER CINDERELLA GIRLS LITTLE STARS EXTRA! Sing the Prologue♪
- 世界滅亡 or KISS | THE IDOLM@STER STARLIGHT STAGE -MUSIC INFORMATION SITE- | 日本コロムビア
曲調が様々変化することから、オーディオ界隈でも話題になっているようです。
seesaawiki.jp dic.nicovideo.jp dic.pixiv.net
*1:トゥルー・ドリームの特訓コミュの締めはだいたいこの趣旨と言えましょう。冷静に考えてPのことめちゃくちゃ好きじゃねーかとは思うけど、恋心は王子様にしか向いていないのでPラブではない(断言)。
*2:6章構成や曲としての流れを考慮しており、あまり極端な反発は想像しない。一部にマジカルエクストラタイム等の言及とのズレは認められるが、そこまでこだわりをもって反映することはこの読み取りの内容に影響しない
*3:𝓚𝓘𝓢𝓢に決まってんだろ!!!!
*4:この言葉を現実に持ち帰った日菜子に、掴めぬ未来などないでしょう
*5:こんな確認するまでもなく「私」=日菜子やろがいとは思いつつ、念のため示しておくのは大事
*6:当人の死などではなく世界の滅亡に行くあたり、セカイ系的な読みはできそうです
*7:あの「えへへ……♪」を聞いてそう思えないとは言わせません。
*8:「私」と日菜子を分けたり意図的に分けなかったりして書いていますが、実際のところはほぼ同一視していますし、どちらでもこの読み取りに影響はないはずです。モチーフはどうあれ妄想の中の登場人物なので。