[トゥルー・ドリーム]喜多日菜子を振り返る

この記事は 喜多日菜子 Advent Calendar 2019 の5日目の記事である。

adventar.org

まえがき

この記事では、いわゆるフェス限SSRの[トゥルー・ドリーム]喜多日菜子について、筆者の妄想力と若干の与太を込めて振り返る。平たくいうとこれは怪文書だ。

日菜子P諸兄においては、ご自身の妄想や解釈と通じるところ、こんな読み方もできるという話題があれば、ぜひ世に放ってほしい。ほかでもないあなたが発信することが、日菜子の実在性を高めることに繋がるからだ。

まだ日菜子をよく知らないという方においては、この記事がわずかにでも、あなたの中の喜多日菜子像を大きくすることに繋がることを祈っている。いずれかの一節でもあなたの心に留まれば幸いだ。

喜多日菜子とは

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メモリアルコミュ1、スカウト時の一幕。
アイドル→ドレス→お姫様の流れるような連想。

喜多日菜子は妄想が趣味のアイドルだ。童話をはじめとする多様な物語に触れて育ち、たくさんの人に愛され、素敵な王子様が迎えにきてくれるようなお姫様になりたいと願って、日々努力を重ねている。

[トゥルー・ドリーム]喜多日菜子とは

ゲーム外の視点

アイドルマスターシンデレラガールズ スターライトステージ(通称デレステ)内に登場する、最高レアリティSSRのカードのひとつ。そのSSRのなかでも一際入手機会が限られ、ゲーム的に強力な性能を与えられる傾向のある、シンデレラフェス限定……いわゆる『フェス限』にあたる。

喜多日菜子がフェス限SSRとして登場したことは様々な驚きと、様々な期待を呼び起こした。この記事では本筋でないので省略するが、喜多日菜子というアイドルは、大きな変化を伴って登場することがしばしばある。*1

登場時の公式アカウントからのツイート。
MVのスクショは「イリュージョニスタ!」の右から2番目配置、
撮影ポイントは『泡沫の煌き』が近いか。

コミュ・セリフでの描かれ方

特訓前ではベルギーの街を歩き、特訓後ではデンマークにある噴水広場で撮影する様子が描かれている。この噴水はチボリ公園にあるものと非常によく似ており、モデルになっているという見方が強い。ベルギーの街並みの方は具体的な場所と照らし合わされてはいないが、ブルッヘがモデルではないかと言われている。

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[トゥルー・ドリーム]喜多日菜子のプロフィールセリフ。
楽しそうな日菜子も可愛いよ。

喜多日菜子の表現としては初めて、特訓前後でどちらも困り眉になっていない。コミュ・セリフの内容としても、事務所に帰ってきた後のシチュエーションとみられるルームセリフ以外では、妄想すること自体に言及する場合を除いて一切「むふふ」と発しない。つまり、[トゥルー・ドリーム]における喜多日菜子は、妄想をしないのだ。

困り眉で描かれず、妄想にふける様子もないとはいえ、喜多日菜子が妄想と切り離されたわけではない。特訓前に描かれるのは妄想にまつわるたしかな日菜子の成長だ。特訓後に描かれるのは、妄想のプロとしての在り様の一側面だ。

特訓前:現実を見逃さない日菜子の成長

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[トゥルー・ドリーム]喜多日菜子
とっておきのときに被ろうと思って買った帽子には、青いバラがあしらわれている。花言葉は「夢かなう」

夢にまで見た憧れの風景

はい?ええ、今は妄想しませんよ~。ここを楽しまなきゃ損ですから~

デレステでの日菜子は、妄想コントロールの習得を一つの課題としてきている。かつて妄想のしすぎで失敗し、「現実の楽しいことを見逃しちゃったらもったいない」と反省していた日菜子。そんな日菜子が妄想より素敵で可愛く思える街並みを満喫する様子は、決定的な成長と言える。

童話の世界に入り込んだような、全てが可愛い尽くしの本物の街並みの体験は、これからの日菜子の妄想にもフィードバックされ、さらに妄想力に磨きをかけることになるだろう。

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メモリアルコミュ3、宣材写真撮影の一幕
まだ妄想をコントロールできず、現実を見逃すことがあった頃

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[トゥルー・ドリーム]喜多日菜子のホーム画面セリフ
妄想より素敵な風景にはしゃぐ日菜子。妄想はしなくても押しは強い。

ハートの色はオレンジ

日菜子にとっての妄想は、夢中になれて、幸せな気持ちになれるもの。まさに夢見心地でいられるものだ。現実の素敵な景色に囲まれて、プロデューサーに優しく見守られていることを含めて、それが日菜子は夢見心地で幸せだというのだ。

プロデューサーに対してはこれまで、厚い信頼と親愛を寄せていること、優しく見守ってくれて、愛情を注いでくれる人だとも語られてきている。その上で、これまでに描かれた心情の中では、最も強い親愛の表現と言って良いだろう。

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[トゥルー・ドリーム]喜多日菜子、特訓前の親愛度演出
どんなに振り切れていても、ハートの色は赤ではなくオレンジなのだ。今はまだ。

特訓エピソード:「喜多日菜子とプロデューサー」の再定義

仔細は省くが、このコミュは絶妙だ。是非自分の目で見てもらいたい。

背景にはTrust meのイベコミュが通じている。Trust meでは日菜子と王子様の関係が語り直された。王子様とアイドルのどちらを優先するかという問いに対して、たとえ王子様が現れても、アイドルを続けたいという答えがそれだ。

同じように、[トゥルー・ドリーム]の特訓エピソードでは、日菜子とプロデューサーの関係が語り直された。誘い受けな態度ではなくストレートに、純粋な疑問にはじまる。何かの予感が背中を押して、その通りだったら素敵だなあという思いが最後の一歩をまさに踏ませようとした瞬間を、「アイドルであること」に阻まれるという演出でだ。

この構造は日菜子の妄想によく出てくる展開と似ていることに、最近まで気づかなかった。

特訓後:妄想が現実になる日菜子の世界

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[トゥルー・ドリーム]喜多日菜子+
カメラの向こうの王子様も、日菜子に夢中に違いない。

日菜子わーるど、その根源

お待ちしていました、王子様…。予習は完璧…あとは、本番を待つだけ

日菜子はいつかお姫様になるためにとたくさんの努力をしてきた。幼い頃から童話に触れて育ち、ワンピースでカーテシーの練習をしてきた。ドレスを着たときの振る舞いはどうあるべきかは、よく知っている。「王子様を迎えるお姫様」というシチュエーションは日菜子にとって、「予習は完璧」「あとは本番を待つだけ」の、最初から持っていた夢トゥルー・ドリームだ。

プロデューサーが用意した、妄想通りの絶好のロケーションのなか、長年の研鑽とイメージトレーニングの成果があらわれる。ずっとそうすることを夢見てきた妄想少女はいま、王子様を迎える本物のお姫様となる。

日菜子だからかかった魔法

日菜子を本物のお姫様にする「この瞬間にかけられた魔法」を、日菜子はプロデューサーがかけたものだと思っている*2。しかし、どんなに妄想通りの素敵なロケーションも、日菜子のためのドレスでさえ、日菜子をお姫様に仕立てあげることしかできない。では日菜子を本物のお姫様とするためにここまでに欠けていて、あの場所にあったものは何か。

それは喜多日菜子自身だ。なりたいと願ってきたお姫様像、そんなお姫様はどうあるべきかを常々妄想し、その日を夢見て備えてきた、喜多日菜子という女の子がそこにいたことだ。日菜子自身が磨き上げ積み重ねてきた妄想と、アイドルになるより前から続けてきた日々のレッスン、ここに通底する日菜子自身の一途な夢トゥルー・ドリームこそが、この瞬間にかけるべき魔法を完成させる。

日菜子とプロデューサーの舞踏会

王子様のいない撮影が終わり、アイドルの時間も終わっていく。魔法が静かに解けていこうとする頃、プロデューサーが日菜子を迎えに現れる。魔法の残滓が日菜子をまだお姫様にとどめているうち、日菜子が求めたのは、プロデューサーとのささやかな舞踏会だ。*3

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[トゥルー・ドリーム]喜多日菜子、特訓後の親愛度演出。
魔法は解けてしまっても、この瞬間は確かにある。

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[トゥルー・ドリーム]特訓後のプロフィールテキスト
あとは王子様が来てくれるだけのところに、プロデューサーが現れた。
どう解釈するも自由だろうが、今はただこの事実だけで十分だろう

おわりに

[トゥルー・ドリーム]に描かれた喜多日菜子の姿は、そのひたむきさと、叶えたい夢に向かって正しい努力をしてきたことが身を結んでいる様子だった。アイドルとしても人間としても前に進んでいるからこそ、日菜子がアイドルになる以前からなりたいと夢見てきたお姫様像、「王子様が迎えにきてくれるお姫様」もやらせてもらえるようになった。

日菜子とプロデューサーの関係は、明確な親愛と信頼を確認した上で、今はまだその先を見るべき時ではない、の留保がついた。なぜなら、喜多日菜子はアイドルだからだ。王子様が現れてもアイドルを続けたいと思っているように。プロデューサーが最終的に日菜子の何であろうとも、今の日菜子はアイドルで、そして変わらずお姫様になりたいのだ。

[トゥルー・ドリーム]では、喜多日菜子がこの先に進むために必要な、確かな前進が描かれたのだと信じる。

これからの喜多日菜子の話をしよう。

関連リンク

*1:喜多日菜子とは (キタヒナコとは) [単語記事] - ニコニコ大百科

*2:[トゥルー・ドリーム]のルームセリフ「〇〇さん、次はどんな魔法をかけてくれるんですか?」に由来する。そのほか、日菜子はプロデューサーのことを魔法使いとも表現することがある。

*3:日菜子Pというのは、自己認識が王子様だったり魔法使いだったり騎士だったり馬だったりする、とても多様性のある括りだ。そんな日菜子を愛する者たちに対して、舞踏会の終わり際、王子様でもお姫様でもないふたりが、密かに二人だけの時間を過ごす……という展開をお出ししてくることは、絶妙なバランス感覚と言わずにいられない。